国立大学法人千葉大学
千葉大学大学院医学研究院/次世代in vivo研究探索センター(cNIVR)の石黒 啓一郎教授、島田 龍輝講師、熊本大学、国立遺伝学研究所からなる共同研究チームは、卵子や精子をつくるために欠かせない「減数分裂(注1)」が、どのような遺伝子のスイッチで始まるのかを調べました。その結果、これまで哺乳類で中心的と考えられてきたMEIOSIN(注2)とSTRA8(注3)の仕組みに加えて、MEIOSIN自体にも、STRA8に頼らず減数分裂に必要な遺伝子を動かす基本的な働きがあることが分かりました。「減数分裂」の実行には、脊椎動物進化の早い生物群にまで共通の原理が利用されていることを明らかにしました。この成果は、生殖細胞(注4)が卵子・精子へ進むしくみやその進化を理解する手がかりとなり、不妊治療や生殖細胞形成の異常を理解する基礎知識にもつながることが期待されます。本研究成果は、2026年8月25日に学術誌Genes & Developmentで公開されました。
(論文はこちら:10.1101/gad.353802.126)

図:各生物のゲノム配列の確認結果
■研究の背景 (詳細はPDF参照)
私たちの体では、卵子や精子がつくられるときに「減数分裂」という特別な細胞分裂が起こります。減数分裂は、親から子へ遺伝情報を受け渡すために必要な、生命にとって非常に重要な過程です。この減数分裂が始まるには、多くの遺伝子が適切なタイミングで働き始める必要があります。哺乳類では、MEIOSINとSTRA8という2つの因子が協力して、このスイッチを入れると考えられてきました。ゼブラフィッシュ(注5)など一部の魚では、ゲノム配列を探してもSTRA8が見つかっていないにもかかわらず減数分裂は起こります。そこで本研究では、STRA8がない動物では、減数分裂のスイッチはどのように入るのか、またMEIOSINには単独でも働く力があるのかを調べました。
■研究成果のポイント (詳細はPDF参照)
・硬骨魚類であるゼブラフィッシュとより原始的な魚類であるヌタウナギでは、STRA8が見つからない一方で、MEIOSINにあたる遺伝子(Meiosin遺伝子)が残っていることを確認しました。
・ゼブラフィッシュでは、Meiosin遺伝子が卵子や精子へ向かう生殖細胞で一時的に働きます。MEIOSINを失わせると、卵子の減数分裂が不完全であるため卵巣の発達が進まず、すべてが雄として発達しました。
・STRA8に結合出来ないようにMEIOSINの一部を欠いた変異体マウスを作って調べると、完全な減数分裂はできないものの、少なくとも減数分裂に向かう初期の遺伝子を活性化させることができました。
・哺乳類ではさらにSTRA8を利用することで減数分裂の開始を頑強にしていることがわかりました。
・これらの結果から、MEIOSINにはもともとSTRA8に依存しない基本的な活性があり、哺乳類においてSTRA8はその働きを強め、より確実にする役割をもつと考えられます。
■今後の展望 (詳細はPDF参照)
今後は、MEIOSINが細胞の中でどのような因子と協力して減数分裂に必要な遺伝子を動かしているのかを明らかにし、卵子や精子が正しくつくられる仕組みをさらに理解していきたいと考えています。
■用語解説
注1)減数分裂:卵子や精子をつくるときに起こる特別な細胞分裂。通常の細胞分裂とは異なり、染色体の数を半分にして、受精後に正しい数に戻る。
注2)MEIOSIN:減数分裂の開始に関わるタンパク質。減数分裂に必要な遺伝子を動かすスイッチの一つとして働く。
注3)STRA8:哺乳類などでMEIOSINと協力し、減数分裂を始めるために働くタンパク質。一部の魚類では見つかっていない。
注4)生殖細胞:将来、卵子や精子になる細胞。親から子へ遺伝情報を受け渡す役割をもつ。
注5)ゼブラフィッシュ:インド原産の硬骨魚類に属する小型淡水魚で、飼育が容易かつ多産で早育等の理由から広く研究に用いられている。
■論文情報
タイトル:MEIOSIN retains a STRA8-independent activity that contributes to meiotic gene activation across vertebrates
著者:Ryuki Shimada, Yukiko Imai, Kimi Araki, Toshihiro Kawasaki, Sakie Iisaka, Shingo Usuki, Kei-ichiro Yasunaga, Sayoko Fujimura, Naoki Tani, Hitoshi Niwa, Shigehiro Kuraku, Noriyoshi Sakai, Kei-ichiro Ishiguro
雑誌名:Genes & Development
DOI:10.1101/gad.353802.126
■研究プロジェクトについて
本研究は、科学研究費助成事業(22K15039、25K18480、23H00379、24H02050、25H01304、22H04922)、持田記念医学薬学振興財団、武田科学振興財団、内藤記念科学振興財団、熊本大学発生医学研究所 高深度オミクス研究拠点ネットワーク事業などの支援を受けて実施されました。
詳細はこちら
d15177-1225-5446a048094186ec9aaf203c0c4345a1.pdf
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千葉大学大学院医学研究院/次世代in vivo研究探索センター(cNIVR)の石黒 啓一郎教授、島田 龍輝講師、熊本大学、国立遺伝学研究所からなる共同研究チームは、卵子や精子をつくるために欠かせない「減数分裂(注1)」が、どのような遺伝子のスイッチで始まるのかを調べました。その結果、これまで哺乳類で中心的と考えられてきたMEIOSIN(注2)とSTRA8(注3)の仕組みに加えて、MEIOSIN自体にも、STRA8に頼らず減数分裂に必要な遺伝子を動かす基本的な働きがあることが分かりました。「減数分裂」の実行には、脊椎動物進化の早い生物群にまで共通の原理が利用されていることを明らかにしました。この成果は、生殖細胞(注4)が卵子・精子へ進むしくみやその進化を理解する手がかりとなり、不妊治療や生殖細胞形成の異常を理解する基礎知識にもつながることが期待されます。本研究成果は、2026年8月25日に学術誌Genes & Developmentで公開されました。
(論文はこちら:10.1101/gad.353802.126)

図:各生物のゲノム配列の確認結果
■研究の背景 (詳細はPDF参照)
私たちの体では、卵子や精子がつくられるときに「減数分裂」という特別な細胞分裂が起こります。減数分裂は、親から子へ遺伝情報を受け渡すために必要な、生命にとって非常に重要な過程です。この減数分裂が始まるには、多くの遺伝子が適切なタイミングで働き始める必要があります。哺乳類では、MEIOSINとSTRA8という2つの因子が協力して、このスイッチを入れると考えられてきました。ゼブラフィッシュ(注5)など一部の魚では、ゲノム配列を探してもSTRA8が見つかっていないにもかかわらず減数分裂は起こります。そこで本研究では、STRA8がない動物では、減数分裂のスイッチはどのように入るのか、またMEIOSINには単独でも働く力があるのかを調べました。
■研究成果のポイント (詳細はPDF参照)
・硬骨魚類であるゼブラフィッシュとより原始的な魚類であるヌタウナギでは、STRA8が見つからない一方で、MEIOSINにあたる遺伝子(Meiosin遺伝子)が残っていることを確認しました。
・ゼブラフィッシュでは、Meiosin遺伝子が卵子や精子へ向かう生殖細胞で一時的に働きます。MEIOSINを失わせると、卵子の減数分裂が不完全であるため卵巣の発達が進まず、すべてが雄として発達しました。
・STRA8に結合出来ないようにMEIOSINの一部を欠いた変異体マウスを作って調べると、完全な減数分裂はできないものの、少なくとも減数分裂に向かう初期の遺伝子を活性化させることができました。
・哺乳類ではさらにSTRA8を利用することで減数分裂の開始を頑強にしていることがわかりました。
・これらの結果から、MEIOSINにはもともとSTRA8に依存しない基本的な活性があり、哺乳類においてSTRA8はその働きを強め、より確実にする役割をもつと考えられます。
■今後の展望 (詳細はPDF参照)
今後は、MEIOSINが細胞の中でどのような因子と協力して減数分裂に必要な遺伝子を動かしているのかを明らかにし、卵子や精子が正しくつくられる仕組みをさらに理解していきたいと考えています。
■用語解説
注1)減数分裂:卵子や精子をつくるときに起こる特別な細胞分裂。通常の細胞分裂とは異なり、染色体の数を半分にして、受精後に正しい数に戻る。
注2)MEIOSIN:減数分裂の開始に関わるタンパク質。減数分裂に必要な遺伝子を動かすスイッチの一つとして働く。
注3)STRA8:哺乳類などでMEIOSINと協力し、減数分裂を始めるために働くタンパク質。一部の魚類では見つかっていない。
注4)生殖細胞:将来、卵子や精子になる細胞。親から子へ遺伝情報を受け渡す役割をもつ。
注5)ゼブラフィッシュ:インド原産の硬骨魚類に属する小型淡水魚で、飼育が容易かつ多産で早育等の理由から広く研究に用いられている。
■論文情報
タイトル:MEIOSIN retains a STRA8-independent activity that contributes to meiotic gene activation across vertebrates
著者:Ryuki Shimada, Yukiko Imai, Kimi Araki, Toshihiro Kawasaki, Sakie Iisaka, Shingo Usuki, Kei-ichiro Yasunaga, Sayoko Fujimura, Naoki Tani, Hitoshi Niwa, Shigehiro Kuraku, Noriyoshi Sakai, Kei-ichiro Ishiguro
雑誌名:Genes & Development
DOI:10.1101/gad.353802.126
■研究プロジェクトについて
本研究は、科学研究費助成事業(22K15039、25K18480、23H00379、24H02050、25H01304、22H04922)、持田記念医学薬学振興財団、武田科学振興財団、内藤記念科学振興財団、熊本大学発生医学研究所 高深度オミクス研究拠点ネットワーク事業などの支援を受けて実施されました。
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