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骨折治癒を担う細胞の代謝変化を超偏極MRIで可視化!

    骨折治癒の早期評価や骨疾患の診断・治療への応用に期待

    2026年8月21日
    岐阜薬科大学
    岐阜大学

    骨折治癒を担う細胞の代謝変化を超偏極MRIで可視化! -骨折治癒の早期評価や骨疾患の診断・治療への応用に期待-

     

     

     岐阜薬科大学 薬理学研究室の久保拓也大学院生(JST SPRINGスカラシップ研究学生、米国ラトガース大学客員研究員)、岐阜薬科大学 薬理学研究室・岐阜大学大学院連合創薬医療情報研究科・岐阜大学高等研究院One Medicineトランスレーショナルリサーチセンター(COMIT)の檜井栄一教授らの研究グループは、東京大学、大阪大学、国立障害者リハビリテーションセンター研究所、岐阜大学との共同研究により、超偏極MRIを用いて、骨折治癒を担う骨格幹前駆細胞のレドックス状態の変化を、生きたマウスの体内で可視化することに成功しました。

     骨折は日常生活や運動機能に大きな影響を及ぼすだけでなく、要介護・寝たきりのリスクを高め、高齢者では骨折後の死亡率の増加にもつながります。骨折すると、骨折部位ではさまざまな細胞が働き始め、なかでも骨格幹前駆細胞※1が骨折修復に重要な役割を担います。X線やCTは骨の構造変化を捉えることができますが、骨折治癒の早期段階では構造的な変化から治癒の進行を評価することが難しい場合があります。そのため、骨折後の早期段階から治癒の進行を評価できる新たな骨イメージング手法の開発が求められてきました。

     本研究では、レドックス※2状態を画像化できる超偏極MRI(in vivo DNP-MRI※3)と活性酸素(ROS※4)と反応する造影プローブを組み合わせることで、骨折後の早期から中期にかけて、骨折部位のレドックス活性が高まり、その後、骨の再構築に伴って低下することを明らかにしました。さらに、骨折部位で働く骨格幹前駆細胞でもレドックス活性が高まっていることを確認しました。本研究成果は、骨折治癒の進行を早期に評価する新たな診断法として活用できるだけでなく、骨折治癒における細胞の代謝変化やレドックス動態の理解を通じて、骨折治癒を促進する新たな治療法の開発につながることが期待されます。

     本研究成果は、英国学術雑誌『npj Imaging』に掲載されました(オンライン版公開日:日本時間2026年8月15日)。

     

     

    本研究のポイント

    ・骨折部位のレドックス動態の変化を、in vivo DNP-MRIによって生体内で可視化することに成功しました。

    ・骨折部位のレドックス活性は、骨折後の早期から中期にかけて高まり、その後、骨の再構築が進むにつれて低下することを明らかにしました。

    ・骨折部位の骨格幹前駆細胞では、健康な骨由来の細胞と比較して、レドックス活性が高く、ミトコンドリア由来のROSが増加していることを明らかにしました。

    ・本成果は、骨折治癒の早期評価や骨再生研究、骨疾患の診断・治療への応用が期待されます。

     

     

    研究成果の概要

     骨折すると、骨折部位に「仮骨」と呼ばれる組織が形成され、その中ではさまざまな細胞がそれぞれの役割を果たします。その中でも、骨格幹前駆細胞は骨折部位で増殖し、軟骨細胞や骨芽細胞へと分化することで、仮骨の形成に重要な役割を担います。本研究ではまず、マウスの骨折モデルを用いて、骨折治癒過程(骨折後の時間経過に伴って仮骨が形成され、その後、骨の再構築が進む過程)が適切に進行することを確認しました(図1)。

     

    【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202608204481-O2-9EiI8DT0

    図1: 骨折後の時間経過に伴う仮骨形成と骨の再構築

     

     次に、レドックス反応によって性質が変化するプローブを骨折後のマウスに投与し、in vivo DNP-MRIを用いて骨折部位の仮骨を経時的に観察しました。その結果、骨折部位では骨折していない健康な骨と比較してプローブの信号が速く減少し、骨折後3日目にレドックス活性が最も高くなりました。その後、7日目、14日目にも高いレドックス活性が維持され、21日目、28日目には低下することが分かりました(図2)。

     

    【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202608204481-O3-38zT4m1n

    図2: DNP-MRIによって捉えた骨折治癒に伴うレドックス動態

     

     さらに、骨折部位の骨格幹前駆細胞を解析したところ、健康な骨由来の同細胞と比較してレドックス活性が高いことが分かりました。

     すなわち本研究により、骨折部位で働く骨格幹前駆細胞の活動の変化を、レドックス動態として生体内で捉えられることに成功しました。

     

     

    研究成果の意義・今後の展開

     これまでのX線やCTなどによる骨折治癒の評価は、主として骨の形態や骨量などの「構造的な変化」に基づいていました。本研究では、従来のX線やCTなどでは難しかった「骨折治癒に伴う細胞のレドックス動態を生体内で捉えること」に成功しました。さらに、骨折部位の仮骨におけるレドックス動態の時間的変化と、骨格幹前駆細胞の機能との関連を明らかにしました。

     本研究成果は、骨折治癒の早期評価や骨再生のメカニズム解明に加え、骨疾患の診断・治療法の開発につながることが期待されます(図3)。

     

    【画像:https://kyodonewsprwire.jp/img/202608204481-O1-t7ov2U0i

    図3: 仮骨のレドックス動態は骨格幹前駆細胞の代謝活性を反映し、骨再生の機能的評価につながる

     

     

    用語解説

    ※1 骨格幹前駆細胞

    骨組織に存在する自己複製能・多分化能をもつ骨の起源細胞。

    骨恒常性の維持や骨折修復を担う。

     

    ※2 レドックス

    酸化と還元に関わる細胞内の化学反応の総称。

    細胞のエネルギー代謝や機能の維持に重要な役割を果たす。

     

    ※3 in vivo DNP-MRI(生体内動的核偏極MRI)

    活性酸素と反応する造影プローブを用いて生体内のレドックス状態を画像化する技術。

    特殊な磁気共鳴技術により、生体内のレドックス動態を可視化することができる。

     

    ※4 活性酸素(ROS)

    酸素から生じる反応性の高い分子の総称。

    細胞内の情報伝達などに関わる一方、過剰に増加すると細胞や組織に影響を及ぼす。

     

     

    掲載論文

    雑誌名: npj Imaging

     

    論文名: Evaluation of redox dynamics in callus-forming skeletal progenitor cells during fracture healing using in vivo DNP-MRI

    超偏極MRIを用いた骨折治癒過程における骨格幹前駆細胞のレドックス動態解析

     

    著者名:Takuya Kubo, Shohei Tsuji, Yoshiaki Kitaura, Hironori Hojo, Shinsuke Ohba, Takuya Katashima, Hiroki Ochi, Masayuki Matsuo, Fuminori Hyodo, Eiichi Hinoi.

    久保拓也,辻翔平,北浦義昭,北條宏徳,大庭伸介,片島拓弥,越智広樹,松尾政之,兵藤文紀,檜井栄一

     

    DOI:10.1038/s44303-026-00190-7

     

    本研究は、日本学術振興会科学研究費助成事業 基盤研究B (一般) (檜井栄一) や、JST次世代研究者挑戦的研究プログラムJPMJSP2142 (久保拓也) などの支援を受けて行ったものです。

     

     

     

     

    情報提供 

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